日本経済新聞の2025年4月2日付けのニュースの概要は以下のとおりです。
主食用の外国産米の民間輸入が拡大している。2025年度の輸入量は兼松や神明(東京・中央)など主要商社・コメ卸だけで約70万人分の年間消費量に相当する4万トンを超え、24年度の20倍前後に達する見通しだ。米国産が過半を占める。政府備蓄米の放出後も国産米の価格は高止まりしている。
私見
日本の米の年間消費量は796万6,000トンであり(平成26年(2014年)度「食料需給表」、出典:農林水産省)、日本は、世界貿易機関(WTO)との合意に基づき、年間77万トンを無関税で輸入する義務があります(ミニマムアクセス枠)。
そして、このうち、毎年、47%に相当する36万トンの米は米国からの買い付け分となっているようです。一方、これはすべてが食用ではなく、飼料用、加工食品用も含まれます。さらに、外食産業の業務用も含まれます。
国内の米価格はなぜ高止まり?
これは主に以下の3つの構造的な要因が考えられます:
(1) 減反政策の影響と生産量の制限
- 国は長らく「生産調整(減反)」政策を行っており、生産量を意図的に制限して需給バランスを保っています。
- これにより過剰供給を防ぎ、価格の下落を抑制しています。
(2) 高コスト体質
- 日本のコメ農業は、小規模経営が多く、機械化や省力化が進みにくい。
- 土地の分散や高齢化もあり、1kgあたりの生産コストが高い。
- 輸入米(例:アメリカ産)の価格がkgあたり数十円に対して、日本産は数百円の水準。
(3) 高品質・ブランド志向
- 日本産米は「安全・高品質・美味しさ」が売りで、価格弾力性が小さい(多少高くても買う層がいる)。
- 一方で、学校給食・加工用などには、安価な輸入米や古米を使用。
なぜ輸入して、輸出もして、価格が高いのか?(仕組みの要約)
項目 | 説明 |
---|---|
輸入(WTO義務) | 約77万トンのミニマムアクセス米の輸入義務がある(主にアメリカ・タイから) |
用途の違い | 輸入米は飼料・加工用が多く、日本産米は家庭用や高級需要に対応 |
輸出拡大 | 和食ブーム・富裕層向け高級米としてアジアなどに輸出中 |
価格維持策 | 減反や補助金で供給を調整、高コストでも価格を維持 |
結果 | 「高価格の日本産を輸出・家庭用に」「安価な輸入米を飼料・業務用に」で棲み分けされている |
アメリカ産米20倍増の背景
- 世界的な穀物需給不安で、備蓄用や加工・外食産業向けの安価な米の需要が増加。
- 円安や国内の価格高騰により、「割安なアメリカ産米へのシフト」が進行。
- アメリカは輸出に積極的かつ供給量も安定しており、日本にとって都合が良い。
以上のように、アメリカからの輸入量は増加しており、カリフォルニア米がスーパーで売られているニュースも見かけられたが、一般人の我々が口にするお米(外食を除く)については極端に外国からのお米が増えるわけではないように思います。
【なぜ備蓄米を放出しても価格が下がらないのか?】
1. そもそも備蓄米の量が限定的
- 政府の「備蓄米(政府米)」は、年間平均で80万トン程度。
- 一部を放出しても市場全体の流通量(400~500万トン)から見れば影響は限定的。
例:20万トンの放出でも、全流通量の約5%にすぎない。
2. 生産量が年々減少している
- 米農家の離農・高齢化・担い手不足により、生産量そのものが減少傾向。
- 2023年は特に猛暑や水不足で、品質や収量が落ちた地域が多い(作況指数も低下)。
3. 飼料用米や輸出向け米にシフト
- 農業政策として「飼料用米」や「輸出用米」への作付け誘導が行われ、主食用米の作付けが減った。
- 結果として、国内需要に対して「家庭で食べる用の米」が足りなくなっている。
4. 家庭での米需要が回復傾向
- コロナ後も「家でご飯を食べる」習慣が続き、家庭用米の需要が底堅く推移。
- 外食・インバウンド需要も回復し、全体の需要が増えている。
5. 円安・肥料高騰・物流費の増大
- 農業のコストも上昇:
- 肥料・資材価格が高騰
- 円安で輸入飼料・燃料が高止まり
- 生産コストが上がる中で、農家は価格転嫁を避けられず販売価格を維持。
6. 買い控えが起きにくい商品
- 米は「主食」であるため、価格が高くても一定量は必ず消費される。
- 家庭では「安くなるまで買い控える」といった選択が難しい。
- 結果として需給ギャップが価格に直接反映されやすい。
まとめ:価格が下がらない構造(因果関係)
【供給減】減反・高齢化・猛暑 → 主食用米の作付減・収量減
+
【需要増】家庭需要+外食・インバウンド回復
+
【コスト高】肥料・燃料・物流費の上昇
+
【備蓄の限界】放出量が少なくインパクトが薄い
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🔥 米価格が高止まり or 上昇
日本国内で流通する家庭用の米の価格が一日でも早く元々の水準(5kg2000円程度)まで戻ることを願っています。
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